地上の星 志望校が母校になる。
誰にも見られないようなところで
ひっそり咲く 小さな花の美しさを
そっと 誰かに伝えたいのと同じように
ともすると 出版の洪水の中で埋もれてしまっている
古くて美しい作品の存在を
微力ながら 伝えたい――。
赤毛のアンの作者、モンゴメリの
珠玉の短編、
「ロイド老淑女」
『アンの友達』の中に収録
村岡花子 訳
(画像は、私のもので、新潮文庫の昭和52年の本。今は表紙が変わっています。)
アンシリーズの中で、この本は
いわば番外編なので、アンはほぼ登場せず、アンの島で生きる他の人々のお話なので、アンを読んでない人でも
これだけを単独で読むことが可能です。
「ロイド老淑女」は、
5月の章から始まり、10月の章で終わります。
私は5月になるといつも思い出します。
“金持ちなのに けちで気位が高い”という、まちがったうわさが信じられていて、町の人との交流もなかった ロイド老淑女。
本当は、とても貧しく、
遠い過去の 短い幸せな思い出を胸に、
寂しく暮らしていたロイド老淑女。
そんな老淑女に、5ヶ月の間に起きた
思いがけない物語。
“夕闇のような胸に突然さしこんだ地上の星” とは、何だったのでしょうか。
長年の 深い悲哀が だんだん癒されていくロイド老淑女の姿に
読者の心もまた 癒されていくのです。
“ボロは着てても 心は錦”
彼女の清らかな世界に
ぜひ ふれていただきたいです。
そして 最後の、老淑女のひとことを
しみじみ味わってみてください。
以前に調べた時、やはりこの本の中で
このお話が一番好きだと思っている人や
美しいお話だと書かれている人がたくさん見つかって、うれしくなりました。
今日の記事は3年前の記事を参考にして書きましたが、少し違いますので
よろしければそちらもお読みいただけますとうれしいです。
リブログしておきます。
地上の星なんでかんでも大集合
この先すずの妄想です。
翔ちゃんとかずくんはラブラブ。大丈夫な方はどうぞお進みください。
あの日、空から見た風景。
セスナは風を掴み、景色はあっという間に地図になった。
都心のマンションの部屋から見下ろす街はまるでジオラマ。
スケールで言うと、何分の1くらいだろうかと首をひねる。
建物も車も、一つ一つ認識できるけれど、あの日上空から見た景色では、どれもさらなる縮小がかかっていた。
随分高くまで昇ったんだな…
思い出せば俺は、いまだに小さくため息をつくのだった。
それは半月ほど前にさかのぼる。
企画で訪れる先が航空部と聞いて、嫌な予感がしなかったわけでもない。
「手作りのセスナ?」
「そう」
「すげえ!カッコイイじゃない」
リビングのローテーブルで広げたノートパソコンを覗き込み、かずは歓声をあげた。
「こんなの自分たちで作れるんだ。すっげえな」
感心しきりのかずだけれど、俺はそのホームページを見れば見るほど不安が膨らんでゆく。
「まさか…乗るなんてこと無いよ…ね?」
呟くような俺の言葉に、
「乗るでしょ、そこは」
かずは至極当然とうなずくのだった。
かくして、きみのヨミは正しかった。
「しょおちゃん、コーヒーはいったよ」
やわらかな呼び声に、我にかえって振り向けば、かずがマグを片手に微笑んでいる。
「おっ、さんきゅ」
昼は汗ばむ陽気だったというのに、今は肌寒いこの部屋。
温かな湯気が上がるそれに、ありがたく手を伸ばせば、
「どうしたの?長いこと外眺めたりして」
きみはいたずら顔で小首を傾げる。
「ん〜、今夜は三日月だなって…」
適当な言い訳で取り繕えば、
「んふふ…ウソだよ、だって、下ばっか見てたもん。」
きみは笑う。
「どのくらいあがったの?ここと同じくらい?」
唐突に思える質問に、俺は思い知らされる。
未だにひきずる、セスナ…恐かったな…なんて、どうにもカッコ悪い後遺症。
きみに隠し通すことはできやしないのだ。
「いやいや、もっと高いよ?」
ぶるる…と身震いすれば、
「そりゃそうか」
きみはますます楽しそうに笑うのだった。
「こっち…来てみ?」
ひと口コーヒーを啜り、マグをテーブルに置くと、俺はかずを窓辺へと手招いた。
その後ろ姿を何も言わぬまま胸に収めれば、
「ふふ…なに?」
正面に浮かぶオレンジの光のタワーに留めた視線もそのままに、くすぐったそうに笑う。
薄い背中を胸で押し、ふたりガラスへと傾けば、眼下には無数の光に覆われた大地が広がった。
「そうだな、もっ…と高かったな。それにさ」
「それに?」
かずの声が僅かに弾む。
「旋回しながらさ…昇って行くんだけど…その度に、ふわっと押し上げられて…」
そう言いながら、華奢な身体をまるごとすくい上げて、共に大きく左右に揺れれば、
「わっ…」
かずは俺の腕にしがみついて、浮き上がったつま先で、ぱたぱたと空を蹴る。
「それが恐いのなんのって…」
降ろしてやれば、ふっとひと息つくが早いか、
「んふふ…やっぱりこわかったんだね」
憎らしいことに、どことなく愉快そううに飴色の瞳を細めた。
「もう、めちゃくちゃ恐かった」
眉をこれでもかと下げて、大げさに身震いしながら訴えれば、
「ふふ…」
きみのなんと楽しそうなことか。
「離陸するとき恐すぎて、思わず ‘かずぅ~!’ って叫んだもん。」
そんな架空のエピソードを加えれば、
「えっ?!」
結んだ桜貝のくちびるをぽかんと開ける。
「オンエアにのってないだろうな…心配だ」
顔をしかめれば、
「冗談でしょ?」
腕の中で窮屈そうに仰ぐ瞳がますます潤みだす。
「冗談」
単純に騙されてくれたことに気を良くして笑えば、
「もう!」
ぺちんと腕を叩かれた。
温かくやわらかなきみを胸に眺める高みからの景気。
それは少しも恐くないのにな。
俺は思わず苦笑いする。
そして再び大空を思い出す。
恐かったけどさ。
だけど…あの風に抱かれる感覚は、きみとふたりならもう一度味わってもいいかなとも思う。
きみを抱いて、例えばこの地上の星々の上を自由に悠々と翔けたなら、それはどんなに素敵なことだろう。
「セスナの操縦免許でも取ろうかな」
「なんですって?」
間髪入れないすっとんきょうな声と共に、かずが弾かれたように俺の胸を押して身体を返した。
あまりの驚き様に、随分と突飛なことを言ったのだと気付かされるけれど、
「おまえを乗せて夜空を飛ぶの。月まで昇ってさ、あの端っこに座らせてやるよ」
ファンタスティックな夢の続きを語りながら、浮かぶ三日月を指差した。
けれど、
「遠慮しときます」
色良い返事はもらえなくて、
「なんで?めちゃくちゃドラマチックだろ?」
顔をのぞき込んで詰め寄っても、
「おれは夢より命が大事ですから」
取り付く島もない。
「冷たいこと言うなよ」
甘えたところで、
「冷たくなんてありません」
かずは、するりと腕を抜け出した。
「ただの夢よ?乗っかってよ」
後ろ姿に拗ねてみる。
すると、さっきまで俺に預けていた背が小刻みに震えて、くるり。振り返ったのは困ったようなやわらかな笑顔だった。
「コーヒー冷めちゃうよ?」
手招きに引き寄せられて近付けば、
とん…
肩を押されて椅子に腰を落とす。
「おれはお月さんの端っこよりか、ここがいいの」
膝の上にちょこんと尻を乗せたかずが、コーヒーを啜った。
うなじから匂い立つなつかしい香り。腿に馴染むやわらかな感触。
「だな…」
腹に腕を回して、もう少し深くと引き上げる。
胸に添うきみの背中の温もりに、ああ…無事帰れて良かったと心底思う。
「しょおちゃん」
「うん?」
「がんばったね」
きみからのご褒美は、コーヒーの香のする、小鳥のような口づけだった。
fin
✩…✩…✩…✩…✩
大変ご無沙汰しております( ºΔº 😉
みなさまお元気でお過ごしでしょうか。
すずは…
はい、忙しながら、元気です⸜(*ˊᵕˋ*)⸝
超超苦手な高い所を頑張った翔ちゃんを
讃えたくて(*´˘`*)♡久しぶりにお話を
書きました。
お読みいただいて
ほんとうにありがとうございます。
いよいよ蒸し暑くなってきましたね。
みなさま体調にはくれぐれもお気を付けて。
5人と共に元気で過ごしましょう(*´ ˘ `๓)
お立ち寄りくださって
ありがとうございました。
涼風