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『』に続いて加賀恭一郎シリーズ10冊目で完結本も勢いで読了しました。今年映画も公開されましたねぇ。見逃したのでWOWOW待ちです(笑)。

今回は時系列が一旦戻って、加賀恭一郎が警視庁捜査一課時代に事件の種が人知れず蒔かれ、そして時を経て日本橋署へたどり着いた加賀恭一郎の元に全てが集結していく、壮大な物語。日本橋署への配属は元々恭一郎本人が希望していたらしいのですが、なぜ日本橋だったのか、なぜそこまで土地に隅々まで熱心に探索を重ねているのかということも明かされます。そして恭一郎がまだ学生だった頃に家を出て行った母親についてもようやく知ることが出来ます。そして、長年喉に刺さったままだった小骨をようやく溜飲できた加賀恭一郎が捜査一課に戻るという納得のエピローグで、シリーズ完結に相応しい長編でした。

松本清張の『砂の器』とよく比較されるとのことですが、『砂の器』の方を未読なもので、小説か映画、どちらかはいつかみてみたいです（と、思っていたら今読書中の本にまさに『砂の器』が出てきて、また不思議で楽しいリンクが発生＾＾）。

加賀恭一郎シリーズも、途中から携帯電話での写真撮影や画像送信、検索などするようになってあぁ、この辺でガラケーからスマホになりつつあるんだなと思いながら読んでいましたが、ここにきてついに「スマートフォン」の文字が登場。そして、すこし古い時代の話ですが原発作業員の生活が語られるのも、東北震災の影響があるのかなぁと思ったり。加賀と松宮の従兄妹コンビも私たちと同じ時代を過ごしてきたんだなという親近感が湧きます。

親近感といえば。『』以降引き続きの日本橋署ということで今回も、次第に事件の真相解明の本舞台が日本橋界隈へと移っていきます。明治座、そして1月から12月に理由不明に呼応する日本橋の12の橋。浅草橋、左衛門橋、西河岸橋、一石橋、柳橋、常盤橋、日本橋、江戸橋、鎧橋、茅場橋、湊橋、豊海橋。東京在住、特に少なからずこれらの地名に土地勘がある人間にとっては物語がより立体的に味わえる醍醐味です(*^-^*)。

あらすじについても軽く忘備メモ。葛飾区小菅のアパートで女性の腐乱死体が見つかり、滋賀県在住の40代女性、押谷道子だと判明。そのアパートの住人は越川睦夫という職業不明で身元についても詳細不明、そして行方がわからなくなっています。押谷道子と越川睦夫の関係性も謎ならば殺害の動機も謎。そもそも滋賀在住の道子がなぜ東京にいたのかも不明。越川は容疑者であるものの、何らかの理由で道子ともども事件に巻き込まれた可能性もなきにしもあらず。松宮刑事も加わった捜査班の面々は、唯一身元がはっきりしている道子の地元滋賀での聞き込みから始めざるを得ません。

地道な聞き込み捜査の結果、明治座で公演中の「曽根崎心中」を題材にしたお芝居の演出をしている元女優の角倉博美が道子と同郷で中学の同級生であり、ある用件で週末を利用して初演日直前の博美を道子が訪ねてきたことが判明します。博美の事務所を訪れた松宮は、ひょんなことで博美と自分の従兄妹の加賀恭一郎が何らかの知り合いだということを知り、恭一郎に会いにいきます。東京で他殺体となってしまった滋賀の女性、正体不明で行方知れずのアパートの住人、被害者女性と加賀恭一郎の両方とのつながりを持つ新進喜悦の女性演出家、彼女の辛い過去、そして恭一郎の母親の過去が見えない糸で繋がって絡まり合って、少しづつ日本橋という土地に手繰り寄せられていきます。

事件の鍵を握っているに違いない元女優で演出家の博美は、映画では松嶋菜々子さんが演じたんですよね。予告編は何度か観ていたので、読みながらすっかり博美＝松嶋菜々子さんをイメージしていました。いいキャスティング( *´艸｀)。阿部寛さんの加賀恭一郎、もすっかりお馴染で中々良い配役だと思っているのですが、それはそれとして、小説の中の恭一郎は阿部さんの恭一郎とちょっとイメージ違うところも。それが不満だとかでは決してなくて、何が言いたいかというと、映像作品での恭一郎と、小説の中の自分がイメージする恭一郎と、それぞれの良さをダブルで味わえるのが楽しかったです♪

加賀恭一郎の新作をもう読むことはないのかと思うと少し寂しいですが、納得の完結でした。そうそう、今回は恭一郎のお父さんの担当看護士だった金森さんの弟さんも登場して捜査に姉弟でそれぞれ協力したり、ついに恭一郎が金森さんをデートに誘った？！な展開もあり。過去のしがらみからにやっと決着をつけられて新しいステージに歩みだせた恭一郎と、金森さんのこの後の進展を勝手に想像（妄想）してワクワクしちゃいます( *´艸｀)。

実年齢も、人生も常に自分よりちょっと先を歩き続けてきた従兄妹の後ろ姿を追いかけ続けて、最近時々並んで歩けるようになってきた松宮の成長＆男前アップぶりも楽しかったので、今度は彼が主人公の小説も読みたいなぁ、そしてその小説で恭一郎もカメオ出演したりしたら楽しいのになぁ、なんていう希望的妄想もススム今日この頃です＾＾。

加賀恭一郎シリーズインデックス

第1の事件　『卒業』

第2の事件　『眠りの森』

第3の事件　『悪意』

第4の事件　『どちらかが彼女を殺した』　

第5の事件　『私が彼を殺した』

第6の事件　『嘘をもうひとつだけ』

第7の事件　『赤い指』

第8の事件　『新参者』

第9の事件　『麒麟の翼』

第10の事件　『祈りの幕が下りる時』

※『卒業』のみ、Blog開始前の読了だった為に記事がありません。